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土佐ブログ【手作り弁当のなく頃に】
土佐ブログ【手作り弁当のなく頃に】
 冒頭に話題が生まれ、登場人物の性格だけで理論が回り、それにストーリーがついてくるという話をかきたかったから、我慢できずに書いてしまった作品。
 登場人物の理之貫と、当ページの管理人は別と考えてもいい。考えなくてもいい。

以下本文です。
土佐ブログ
○○年○○月○○日
カテゴリー:友人
【手作り弁当のなく頃に】

 麗らかな昼間のこと。
今日は───と、岸部紫(きしぶ ゆかり)は言う。
「実は、御弁当は手作りなのです」
ぽつんとそのように言うのだ。
「手作りの御弁当なの?」
 私は訊く。
「どうにでも」
 間髪いれずに言った。それほど、この議論の意味の無さは明白だった。
 私は朝から彼女の下宿を訪問した。特に理由はない。彼女も理由なく承諾してくれた。ここには壮大な計画も、尊大な因果関係もない。
 そして、この偶然の訪問に対して、手作り弁当なのだという。
 紫は御弁当箱を出した。大きなそれだ。二人分かもしれない。二日分かもしれない。
 私は何の期待もなく蓋を開けた。
 中には本が二冊。
 料理の本がワン、ツー。
「本に見えてきたわ」
「それ、本」
「本か」
「本です」
「手作りの本?」
「買いました。三六〇円」
「つまり、この本を参考にしながら、今からお弁当を作る、という意味かな」
 実は、御弁当は手作りなの、という言葉を思い出す。
「そうかもしれません」紫は続ける。「でも、わたくしはまだ説明をするかもしれません」
「例えば?」
「とある所にお腹を空かせた旅人がいました。食べ物を分けてくれと言われます。ところが、言われた者は持っていたサカナをあげたのではなく、釣りのやり方を教えたのです」
「その話、まだ続く?」
「そもそも、食物を与えるより、それを手に入れる方法を教える方が遥かに合理的なのです」
 紫は淡々と述べる。
「だから、今この瞬間を持ってして、わたくしは、貴女に壮大で尊大な御弁当を差し上げたといえるのです」
「なるほど」私は言う。「“手作り弁当”は道理ね」
「世の中はもっと“手作り弁当”である必要があります」
 紫は私をじっと見つめて言う。
「受験勉強もそう。個々に留まる問題をちまちまと教えてくださる先生は効率が悪いのです。もっと体系的な授業が求められています」
「そうね。少なくとも、単元ごとに共通したセオリーをほのめかす授業をしてほしいものね」
「言われる通り」
 そのとき。
 俄かに、私のポケットの中の何かが震える。
 それは携帯電話と呼ばれる機器であった。
「あれ、携帯電話が震えてるわ」
「それは、電話を着信しているからなのです」
「というと、これには電話機能が備わってるのね」
「その通りです」
「どうやって電話に出るの?」
「人間は太古より絵を使って物事を表してきました。今日でも、その傾向は残っています。そもそも文字による表記より、早く分かり、全世界共通なのです。そして、小さなスペースでも、複雑な内容を盛り込めるのです」
「要するに、この受話器マークのボタンを押せばいいのね」
「これが、“手作り弁当”的な携帯電話の説明です」
「まあ、とっくに電話は止まったんだけど」
「しかし、これで貴女は絵のボタンを使いこなせるようになったも同然です」
「確かに。携帯電話と呼ばれる機器をよく見るとボタンがいっぱい付いていて、しかも、その銘々に絵や記号が書かれているのね」
「そう、親は子に、このような教育をしていかなくてはいけないのです」
 紫は話を続けた。
 先日、スーパーでの話らしい。
 幼い子が洗剤を手に取って───これ、なあに?───と親に尋ねていたとのこと。
「そこで親は、物を見極める方法と心得を説くべきなのです」
「例えば、書物で調べるとか?」
「いいえ、それどころか、人生の意味や、運命の定義まで語る必要があるのです」
「スーパーって哲学の宝庫ね」
「第一に、世の中は哲学の宝庫です。そもそも、辞書にも───こうこう、こうやって意味を考えなさい───と書くべきなのです」
「それって全ての単語に共通することだから、考え方辞典ってなるね」
「つまり───」
 紫は一層、声を張り上げて言う。
 ───アフォリズムの時代なのです、と。
「アフォリズムとは」私は言う。「物事の真実を簡潔に鋭く表現した語句。警句。金言。箴言。大辞泉より」
 金言って、カネゴンって読むのかと思っていた。
「そうなのです。教える側は如何にアフォリズムであるかが重要なのです。今こそ、全国民はアフォリストにならなくてはいけないのです」
「アフォリスト!」
「自己紹介もそうなのです。如何に短い言葉で自分を説明できるか」
「例えば?」
「そうですね。『自己紹介ではアフォリストになる場でありまして───』というのもどうかと思います。『こういった場で、わたくしは回りくどくなりまして───』なんかも駄目ですね。『僭越ながらも、わたくし───』というのもクラスとかでは不適かと。『敬具、お元気ですか皆さん───』、これも変です。『麗らかな昼間のこと───』という書き出しも可笑しいです」
「ちょっと待って。最後のだけは、この話をメタ的に非難してるだけじゃないの?」
「ああ、どうしたらいいのでしょう。これは新学期まで考察を繰り返さなくてはいけません」
「多分、今の聞いたら、ゆかりんがどういう人間なのか分かると思うよ」
 ゆかりん、というのは私が紫を呼ぶ時の愛称である。
「アンケートもそうです」
「おっと、立ち直りの早い」
「『ゆとり教育をどう思いますか?』と訊かれたら、『二階から目薬をさす』と」
「二階から目薬をさすのは難しい。よって、あまり効果は期待できない行為であるというマニアックな諺」
「『ジプシーは差別用語ですか?』なら、『頬を顔』」
「頬も顔も呼び方は違うが同じ部分を指す言葉。つまり、呼び方はどうであれ、実質は同じだということ」
 ぐぅ、とお腹が鳴る。
「なんだか、諺を使えということになってる」
「そうです。今こそ、全人類は諺遣いになる時なのです」
 ちょうど、そういうとき。
 間髪いれずに、とある発言が許された。
「いいえ。それは大きな間違いですの」
 窓の外。
 聖少納(せいしょう おさめ)という友人だった。
「あ、貴女は聖少さん」
「あ、本当に納ちゃん」
 紫と私は言う。
「御沙汰しております」
 納は私に深部下とお辞儀をする。
「自分は、理之貫(りのつらぬき)様に正しく、由々しき知識をご提供するために現れたしだいでございます」
「───大きな間違い、とは一体、何のことです?」
紫は冷静に言う。
「貴女は甘え過ぎているのですわ、岸部さん。世の中はそんなに甘くはないのですのよ」
「それは、世の中が徹底していないからです」
「世の中に要求するには、例えそれが可笑しな世の中だとしても、その世の中を渡る必要があるのです。すべての授業を完璧にこなしてくださる先生などいらっしゃられないですの」
 彼女は続ける。
「世の中には─── 一を聞いて、十を知る、という言葉がありますわ」
 彼女は余裕の表情で話す。
「先生が体系的な授業をなさらないというのなら、自分たちが体系的に受け止めればよいのです。例えサカナを貰ったとしても、このサカナの口にある針の跡を発見し、そこから釣りのやり方を思いつけば良いではありませんこと?」
「それもそうね」
「わたくしが言いたいのは、日常を営む際に、常に情報を提供する立場になり得、そしてその心構えがアフォリストであり、諺遣いだと言っているのです」
「それを強要する必然性はありませんの。今を生きる現代人が、一を聞いて十を知ればいいのですわ」
「一を聞いて十を知る人間ねぇ」
「称して、一十(いちじゅう)の王、とでも申しましょうか」
「諺遣い VS 一十の王」
「さあ、理之貫様も御参戦してくださいまし。聡明な貴女様なら勿論、私、一十の王の見方をしてくれるはずでしょう」
「どうなのですか?」と紫。
「どうなのでしょうか?」と納。
「仕方ないね。今回の一件、私、理之貫がしっかり理屈を貫きましょう」
 私は、声を張り上げて言う。
「どちらも間違ってるね」
「そんなことはありません。言わば、二者択一の問題でしょう?」
「違うよ。『強要する』というのが間違いなの。両者とも、甚だ勘違いが過ぎるの。固定概念に捉われている。それはどちらも『効率性』に基づいてしまっている」
「それは当然でしょう。如何に効率的なのかを論じているのです」
「要領の得ない先生も結構。一を聞いても馬の骨、十を聞いても有象無象でさえも大歓迎」
「馬鹿を言わないで下さい」
「欠点があるから情がある。完璧でなくてはいけないだなんて、そんなことはない」
 私は二人を見る。
「手作り弁当とは、単に個々人が作る御弁当のことを指すのではない。そもそも、マニュファクチャーだろうと、オートメーションだろうと元来、人間によって生み出されたもの。ならば手作りとして然るべき。さながら、何故か個々人の作るところの御弁当を手作り弁当とする」
「その心は?」
「この御弁当が感情を感ずるに値するか、否か。手作り弁当には情がある。はたまた、どうして手作り弁当が、毎回そっくりそのままコピーできようか? 失敗もあり、非効率的でも結構。完璧さなんていらない。貴方たち、手作り弁当が泣いているのよ」
「なんか、話が逸れて行っているだけな気がします」
「そんなことはない。アフォリストか、一十の王か。答えは、どちらも強制するのは間違い。答えを決めること自体が、非効率的であり、同時に意味がない。なぜならば、要領を得ない先生でも、要領を得ない生徒でも、回り道をするからこそ絆が生まれる。雨降って、地固まる」
「ああ、なんて柔軟な御方」
「成程」紫は続ける。「ところで、だから一体、今回の話をどう纏めるのですか?」
「え? 纏めないといけないの? ああ、そうだ。ほ、ほら、別に欠点があってもいいのよ。オチがなくてもいいの」
「なんか、挙動不審です」
「挙動不審でも、一挙一動でも、二足歩行でも構わない。毒を抜いた人間はつまらない。奇麗な花には刺がある。個性が認められる時代なの」
「この話、どうやって終わるのでしょう?」
 というわけで、皆さん。
 失敗や欠点で、くよくよしないでください。
 それは“手作り弁当”なのです。
 伝えたいものがあれば、いいじゃないですか。

 新学期。
 自己紹介。
 岸部紫は
「詳しくは、先ほど配りました、わたくしのプロフィールを参照してください」
 とアフォリストでした。

 因みに、私は
「私の筆名は“理之貫”といいます。私の将来の夢はミステリー作家になることなのです。毎日、日記を付けています。いずれ、この日記をミステリーとして出版するつもりです」
 私も、プチアフォでした。
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テーマ:小説 - ジャンル:小説・文学

【2008/04/02 05:28】 | 土佐ブログシリーズ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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