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土佐ブログ【時をかける消除】
土佐ブログ【時をかける消除】
 キャラの個性だけで進む話を書きたくて、書いてしまった可哀そうな作品です。

 以下、本文です。
土佐ブログ
△△年△△月△△日
カテゴリー:学校
【時をかける消除】

 私と岸部紫(きしべ ゆかり)が教室に入るや否や、源氏輝(げんじ ひかり)が泣きついてきた。
「どうしたの?」
 と私は問う。
 輝は泣き泣き喋り出す。
「ワタシ、フられたんです……」
「それは可哀そうに」事情は知らないが、純愛だったのだろう。「しかし、いつまでも落ち込んでいても仕方ないよ。嫌な事は忘れて、前向きに生きていきましょう」
「それが、その……」
 と言って、輝は明るい桃色のマフラーを突き付ける。
「これ、恋人のを借りたんだけど……借りたまま別れちゃって。それで、これがあるから逆に忘れられないの」
「     」
「     」
 私と紫は無言で顔を見合わせる。
「あれ? 貴女の恋人って桃色のマフラーをするの?」
「というよりもむしろ」紫は言う。「貴女の恋人とは、どなただったのですか?」
「空瀬巫女(うつせ みこ)さんです」
 空瀬巫女というのは私のクラスの、その勿論、女子。
 やっぱり、私と紫は無言で顔を見合わせる。
 頭の中には、とっても有名な花の総称が浮かんでいた。英語でLily。

「ええ、交際は御断りしたよ」
 と巫女は言うのだ。
 私たちは、あの後、巫女のところに行って詳しい話を聞きに行った。輝の純愛がどうこうではなく、寧ろ、関心は別のところにあったわけだが。
「一番の理由は、同性だから」
それは、同性差別です───と紫は即答した。
「まあ、それはいいじゃない」私は宥める。「今回はそういう話じゃないんだよ」
「それはそうと、どうしてこのシリーズには女の子しか出て来ないのですか? 源氏さんを女の子にするから、ややこしくなるのです」
「それはね、これには漫画、というかラクガキの原作があるからよ」
「それは初耳です」
「作者さんは女の子しか描けません。寧ろ、描きません。男を描いても仕方ないと」
「それはそれで差別です」
「二次元キャラに人権はない。差別ではない、とのこと」
「まあ、それはいいでしょう」
「それで、一体、私に何の用があるの?」
 巫女はそう言って、首を傾げる。左右に結んだ髪が揺れる。
「しかし、貴女は桃色のマフラーを彼女、輝ちゃんに貸したままよね。それは今、彼女を執拗に恋しがらせているの」
「そうなの。でも、そういうのって、悪くないと思うんだけど」
「というと?」
「ほら、要らない癖に旅行に行くと買うキーホルダーとか、遊園地の半券の切れ端とかを大事に取っておかない?」
「それは分かる気がするけど」
「捨てるに捨てれないもの。目薬の無駄に豪華な包装箱。要らないのに捨てられないもの。ストラップ本体は落としてしまったけど、別のに付けると使えるストラップの紐。微妙に残った電池。昔よく遊んでいた縫い包み。バックに付いていたショルダー用の紐。使わないのに取って置いちゃわない?」
「ああ。確かに。コピー用紙の袋がチャック式で使う当てはないのに取って置いたり、買ったコンロが入っていたダンボール箱は使わないけど、引っ越しとかに使いそうで、当てもなく残しまったり。景品のボールペンとか、転校した友達に貰った折り鶴とか」
「わたくしは一切捨てます。今、用途ないものは一生使いません」
 紫はそういうのは捨てそうだ。
 捨てるのに快感を覚えそうだ。
 そのとき、私の後ろで声がする。
 ───新しいチョークってどこにあったかしら?
 どうやら、チョークの箱が切れてしまったようである。
「あっ」
 と直ぐに反応したのは、巫女である。
「待って、それ捨てないで。そのチョークの入っていた空箱を捨てないで」
「え?」その子は唖然とする。
「どうせ捨てるんでしょ? だったら頂戴できませんか?」
 と言って、箱を貰う。大事そうに抱える。
「私、そういうのを取っちゃうタイプなの」
「捨てなさい」と紫は言う。「みっともないです」
「やめて。こういうコ、放っとけないの」
 チョーク箱を擬人化している。
 そんなに強く抱いたら、服が汚れてしまう。
「甲子園とか行ったら、まず砂を持って帰るタイプね」
「海に潜っても、砂を持って帰るの」
「大学見学とかで、大学グッズを買いそう」
「人の家に行っても、空気を缶詰に詰めるの」
 アレの人のようだ。
 これなら、輝はフラれて正解かもしれなかった。
「そんなに物を取っておいても、部屋が狭くなるでしょう」
 紫は、僅かに怒ったように言うのだ。
「そのために部屋があるのよ」
 そうかもしれない。
 プライベートと書いて部屋と読ませたい。せめて逆。
「人間は新しいものを得ると同時に古いものを失うのです」
「それはRPGだけの話よ」
「あの有名なカードゲームでも、サイドボードは十五枚と決まっています」
「でも、デッキは六十枚以上でもいいんでしょ?」
「戦隊ヒーローの定員は五人までです。補欠合格はありません」
「あれは総司令官や秘書なんかいるじゃない?」
「新しい仮面ライダーでると、古い方は放送を止めないといけません」
「『りゅう、なんたら』とかいうのは、だからいっぱい出てたんでしょ」巫女は必死になって言う。「それに、メジャーアニメがどんどん定番になってるでしょ? かの有名なアニメは声優さんが変わっても、同じタイトルの映画でもやってるよ」
「確かに」
 私はそう言う。
 オチを考えている探偵物のアニメでも、人気があれば止められない。
 それと同時に、歴代の小さい子向けのアニメになりつつある。
 もし、そうなったのなら、探偵が幼児教育の一環となるのだ。
「これは、蓄積社会 vs 心太社会の戦いね」
「でも、そのアニメでもいつかは終わります」
「ううん、そんなことないよ。続くよ。ネコ型のなんとかとか、名前に海の動物ばかり出てくるアニメとか、クレヨンうんたらとか、ハムスターの話とか」
 これも幼児教育の類である。
───大体、と巫女は続ける。
「もう終わってしまったアニメでもゲームやネタとして使われるわ。七つの球で願い事が叶う話だって、ゲームは今でも人気よ。それにファンは漫画を保管するし」
「それは全部ではありません」
「私たちの心の中では生きています」
 それもそうである。
 歴代戦隊ヒーローは、何代目とかで昔のヒーローをカウントする。
 つまり、今のヒーローは、昔のヒーローがあってこそなのである。
 例えば、いま、『とつもなくラッキーマンと愉快な仲間たち』というマンガを描くと、得てして罵声を受け、“パクリ”というレッテルを貼られるであろう。
 つまり、心の中でカウントされている。
 消えたことは永遠に残る。
 消除は、時をかけるのだ。
「しかし、心の中でカウントするのはいいけどさ」私は言うのだ。「それって、そのチョークの箱を大事に取っておくことに矛盾しない?」
「あ」
「あ」
 そこで紫は言う。
「そうです。わたくしたちの授業を合理的に支援してくださったチョークの方々がいらっしゃった箱(スイートホーム)は、心の奥底に仕舞って置きましょう」
「ま、待ってよ。私は、この子を愛でていたいの」
「ところで」と言いだしたのは、新たに現れた聖少納(せいしょう おさめ)だ。「心太社会があるのでしたら、その逆は如何ですの?」
「逆?」
「補充社会ですわ」
「ほじゅう」
「得る前に捨てるのです。部屋の掃除をしてから買い物に行くのです。今思えば、アニメは終わってから新しきものが始まるのですの。オモチャも、遊び飽きて、捨ててしまってから、新しいもので遊ぶのです」
「合理的かも」
「『踊る大捜査、なんたら』とかいう映画の女性指揮官は言いましたのよ。『警官が死んだら、補充しなさい』と。名言ですわ」
「寧ろ、明言だよね」
「どう思われます?」
「え、私? 私は巫女ちゃんにちょっと賛成。人間、死んじゃって何も残らないのはヤでしょ?」
「ああ、そうです。今思うと、蓄積社会では御墓で世界が埋まります」と紫は言うけど。
「ないよ。確かにいずれ無くなっちゃうよ。私たちも、この地球も永遠じゃないんだから。でも、捨てたくない時くらい持っててもいいんじゃない?」
「流石、心の御広い御方です」
「あ、そうそう。私、記念に輝のハンカチ貰ったわ」
「ああ、話は戻って、輝ちゃんの話。可哀そうだから仲良くてあげてよね?」
「それなら、心配ないよ」
 と巫女は言うのである。

 その日のうちに、輝は別の子と付き合い出したらしい。
 勿論、相手は女の子。
「ワタシ、女の子にしか興味ないんです」
 いや、女の子だったら誰でもいいのではないだろうか。
 今週だけでも、彼女が声をかけた女の子は数十人だったと。
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テーマ:小説 - ジャンル:小説・文学

【2008/04/02 22:52】 | 土佐ブログシリーズ | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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コメント
スーサイドガイドを読む前に、タイトルがセンサーに触れたのでこの作品を読んでみました。以下感想。

まず全体について。確かにキャラの個性だけで進む作品で、長さの割りに多くのキャラが出ています。キャラそれぞれに考え方があって、そこから生まれる議論は他の理路整然とした作品に通じるものがあると思います。しかし小説として辛いのは、この長さにしてはキャラが多すぎること。これを解決させるにはもっとキャラを際立たせればいいのでしょうが、この作品においてはそれは望めないようです。なぜならすでに登場人物が個性的であるから。ではどうすれば小説としてよくなるかといえば、もう少し長くしてみればよいかもしれません。もしくはこのシリーズ、たくさん続けばそのうちキャラクターの基盤部分が咀嚼可能になり、よりおもしろく見えてくることでしょう。

次にタイトル。最後まで読めば納得のできるタイトルでした。筒井康隆著作の『時をかける少女』をもじったもののようですが、SF好きとしてはそれだけで読む動機になりました。全く時かけのパロディではないですが、作中にさまざまなフィクションを引用しているので、その延長にあるネーミングだと納得できます。

構成について。横書きでかつブラウザで読むことを想定した「ブログ」を礎にしたある意味作中作であるので、多少の文章作法違反はとかく言うべきにあらざるものだと思います。それに無駄な文もなく、読みやすかったです。でも、これがブログを意識したものでなければ、最初のほうにある空欄だけの「」はあまり効果的とは思えません。むしろブログを想定したものでも効果的だとは思いませんが、許容は可能というだけで、これが一般的な書き方をされていたら個人的に認め難い表現です。基本的に空欄「」は好きではないからでしょうが、効果的に使われていたら文句はないですけど。

最後に。相変わらず名前が面白い。今回はどんな人名が出てくるかと暗に期待してましたが、いい感じに期待通りでした。

感想は以上です。
【2008/05/02 16:29】 URL | 壱片時乃 #aiMm5YXE[ 編集] | page top↑
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